認知症 介護における退行現象への理解
退行とは、人が成長していく中で、一度身につけた能力や行動の仕方が、何らかのきっかけで以前の状態に戻ってしまうことを指します。まるで時計の針が巻き戻るように、以前の段階に戻ってしまうのです。これは体の働き、社会の中でのふるまい、気持ちの表し方など、様々な場面で見られることがあります。例えば、トイレの練習を終えた子どもが、強い不安を感じた時に再びおねしょをしてしまう、お年寄りが認知症になった後に、幼い頃の言葉遣いになる、といったことが挙げられます。また、職場でのプレッシャーから、家で子ども返りしてしまう大人もいます。仕事で厳しい叱責を受けたり、大きな責任を負ったりすることで、強いストレスを感じ、本来の自分を見失ってしまうのです。家に帰ると、まるで子どものように駄々をこねたり、泣き叫んだりしてしまうことがあります。これは、無意識のうちにストレスから逃れようとする防衛本能によるものと考えられています。退行は一時的なものから長く続くものまで様々で、その程度も軽いものから重いものまで幅広くあります。少し気分が落ち込んだ時に、子どもの頃好きだったお菓子を無性に食べたくなる、といった軽いものから、日常生活に支障をきたすほど重症になってしまう場合もあります。重要なのは、退行は怠けているとか、わがままを言っているのではなく、何かしら困難な状況やストレスに対する反応として現れることが多いということです。周囲の人は、退行している人を責めたり、無視したりするのではなく、その背景にある苦しさや不安を理解しようと努めることが大切です。温かく見守り、安心できる環境を整えることで、退行した状態から回復するのを支えることができます。場合によっては、専門家の助言や支援が必要となることもあります。周りの適切な対応が、退行から回復するために不可欠です。
