その他 高齢者の孤独:鰥寡という現実
『鰥寡(やもお)』とは、もともとは配偶者を亡くした人、または親や子どもを亡くした人を指す言葉です。特に、高齢者がこれらの近しい家族を失い、頼れる人がいなくなった状態を表す場合によく使われます。かつては、大家族の中で支え合うのが当たり前だった時代には、家族を亡くすことは即ち、生活の支えを失うことを意味していました。その喪失感や不安は計り知れないものであったでしょう。しかし、現代社会においては、この言葉の意味する範囲は広がりを見せています。核家族化や少子高齢化の進行に伴い、一人暮らしの高齢者や身寄りのない高齢者が増えている現状を受けて、『鰥寡』は、必ずしも肉親を亡くした状態だけでなく、広く社会から孤立した高齢者の状態を指す言葉として用いられるようになってきています。つまり、物理的に一人であるというだけでなく、精神的な孤独や社会との繋がりの欠如といった、より複雑な問題を含む概念として捉えられるようになっているのです。高齢者が『鰥寡』の状態にあるとき、どのような問題が生じるでしょうか。まず、日々の生活におけるちょっとした困りごとを相談したり、手伝ってくれる人がいないという問題があります。買い物や料理、掃除、通院といった日常的な行為も、一人では負担が大きくなってしまうことがあります。また、誰とも話さない日が続いたり、自分の気持ちを分かち合える人がいないことで、精神的な負担も増大します。こうした孤独感や孤立感は、健康状態の悪化にも繋がることが指摘されており、高齢者の生活の質を著しく低下させる可能性があります。現代社会における『鰥寡』は、高齢者個人だけの問題ではなく、社会全体で考えなければならない重要な課題です。地域社会との繋がりを強化したり、高齢者を支えるための様々なサービスを充実させるなど、高齢者が孤立することなく、安心して暮らせる社会を築いていく必要があるでしょう。
