介護職 やる気を引き出す介護
人は誰でも、何かをするための理由、つまり心の動きを必要とします。これを動機づけ、あるいはやる気と呼びます。介護の現場では、この動機づけが利用者様の生活の質を大きく左右します。歳を重ねたり、病気になったりすることで、体や心の働きが弱まることは避けられません。すると、今まで当たり前にできていた食事や入浴、トイレに行くといった日常の動作でさえ、おっくうに感じてしまうことがあります。趣味や人との交流といった楽しみにも、以前ほどの意欲が持てなくなるかもしれません。こうした状態が続くと、心身の機能はさらに低下し、生活の質が下がるだけでなく、健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。そこで、介護職員の役割は、利用者様のやる気を引き出し、その人らしい生活を支えることにあります。そのためには、まず利用者様の気持ちを理解することが大切です。何が好きで、何が嫌いなのか、何が得意で、何が苦手なのか、どんなことをして過ごしたいのか、じっくりと耳を傾け、共感する姿勢を示す必要があります。決して無理強いするのではなく、利用者様自らが「やってみたい」と思えるように、丁寧に働きかけることが重要です。例えば、以前は絵を描くことが好きだった利用者様であれば、「今度一緒に絵を描いてみませんか?」と声をかけてみる。庭いじりが好きだった利用者様であれば、「暖かい日に、一緒に庭に出てみませんか?」と提案してみる。このように、利用者様の個性やこれまでの生活、大切にしていることを理解した上で、その方に合った方法で動機づけを行うことが大切です。そして、小さな目標を立て、それを達成する喜びを味わってもらうことで、さらに意欲を高めることができます。「今日はお茶碗半分のご飯を食べることができましたね」「お風呂で気持ちよく体を洗うことができましたね」といったように、小さな成功体験を積み重ねることで、自信を取り戻し、生活への意欲を高めることができるのです。常に利用者様中心のケアを心がけ、その方の尊厳を守りながら、より良い生活を送れるように支援していくことが、介護における動機づけの本質と言えるでしょう。
