その他 力を引き出す介護:エンパワーメント
介護の世界で『支える』とはどういうことでしょうか。それは、ただ身の回りの世話をすることだけではありません。食事の世話、お風呂の手伝い、着替えの介助、これらは確かに大切な仕事ですが、真の『支える』こととは、その人が持っている力を信じ、それを引き出すことです。人は誰でも、年齢を重ねたり、病気になったりすることで、身体が思うように動かなくなったり、社会とのつながりが薄くなったり、様々な壁にぶつかることがあります。こうした状況では、どうしても自信を失ってしまい、周りの人に頼りがちになってしまいます。しかし、どんなに大変な状況でも、誰もが持っている力、これから花開く可能性、そしてかけがえのない尊厳があります。その人が持っている力を信じ、それを発揮できるよう助けることを『力づける』と言います。介護をする人は、その人が何を求めているのか、何が得意なのか、どんなことに喜びを感じるのかをしっかりと理解することが大切です。その人が自分で選んで、自分で行動し、自分らしい毎日を過ごせるように、寄り添って助けていくことが必要です。それは、ただ『してあげる』介護ではなく、『一緒に作り上げていく』介護です。たとえば、足腰が弱くなった方がいるとします。歩くことが難しくなり、家の中で過ごす時間が長くなると、どうしても体力が落ちてしまいます。そこで、『歩けなくなったから車椅子』と決めつけるのではなく、『どうしたら少しでも自分の足で歩けるだろうか』と一緒に考え、工夫をすることが大切です。手すりを設置したり、歩行器を使ったり、あるいは短い距離でも毎日歩く練習をしたり。そうした小さな一歩を応援することで、その人の自信を取り戻し、生きる喜びにつながるのです。介護とは、その人の尊厳を守り、その人らしい生き方を支えることです。そして、それは、介護をする側とされる側が、信頼関係を築き、共に歩んでいく中で実現していくものなのです。
